定番ツアーはもう飽きた?ローカル旅行情報発信サイト「コスパトラベル」

パッケージツアーやガイドブックに頼った旅行に飽きた大の旅行好きの方々向けに、ローカル&コスパの良い旅行情報を集めたポータルサイト

Tunisair Express搭乗記 - 親会社「チュニスエア」より酷い?世界最凶LCCの個性を体験してみた

記事内にはスポンサーリンクが含まれる場合があります。

チュニスエア本体の搭乗記を2回にわたってお届けしてきたが、今回はいよいよシリーズ完結編。Tunisair Express(チュニスエア・エクスプレス)の搭乗体験をレポートする。

Tunisair Expressは2007年に設立されたチュニスエアの子会社で、格安航空会社(LCC)として運営されている。親会社のチュニスエアが「世界最悪の航空会社」という不名誉な称号を持つなら、その子会社は一体どんな個性を見せてくれるのか?期待と好奇心を抱きつつ、チュニス→ジェルバ→チュニスの往復便を利用してみた。

今回利用したのは、8月10日のチュニス発ジェルバ行きUG008便(17:45発予定)と、8月12日のジェルバ発チュニス行きUG011便(20:15発)。果たしてどんな「チュニジアらしい体験」が待っているのだろうか。

前回記事はこちらから

www.kosupatravel.com

予約の段階から始まる冒険

まず最初の「チュニジア体験」が予約から始まった。Tunisair Expressの公式サイトは、なぜかフランス語以外ではうまく機能しない仕様になっている。英語モードにしても途中でエラーが発生し、結局フランス語で予約することに。

www.tunisairexpress.net

これはある意味で「チュニジアらしさ」を表している。フランスの保護領だった歴史もあり、公用語の一つがフランス語なのだから、むしろ現地の文化を体験できると前向きに捉えよう。久しぶりにフランス語を使う良い機会になった。

さらに興味深いのが、国民価格と外国人価格の設定だ。Googleフライトでサジェストされる金額は国民価格で表示されるが、実際に外国人が予約しようとすると2-3倍の金額が提示される。

これは多くの途上国・観光立国で見られる二重価格制の一種で、チュニジアも例外ではない。現地の人の経済力に合わせた価格設定と、外国人観光客向けの価格設定を使い分けているのだ。確かに理にかなった制度とも言えるが、予想していなかった旅行者には驚きの体験となる。

OTAサイトなどで安く販売されているケースもあるが、これらも価格体系を混同している可能性があり、念のため公式サイトで外国人料金を支払うのが安全策だろう。

チュニジア流フレキシブル運航

予約から数週間後、AirHelpのデータから当該便の情報が消えているのに気づいた。嫌な予感を感じて公式サイトから予約照会をしてみると、なんと当初乗る予定だった18:30発のUG010便がキャンセルされ、17:45発のUG008便に勝手に振替になっていた。

事前通知はなし。Tunisair Expressからの公式通知が届いたのは、その数週間後だった。これぞ「チュニジア流フレキシブル運航」と言ったところだろうか。おそらく乗客数の関係で便を統合したのだろうが、このようなダイナミックな運航調整も、効率性を重視するLCCならではの特徴と言える。

今回は余裕のある旅程だったので逆に早く到着できてラッキーだったが、タイトなスケジュールの場合は要注意だ。

搭乗当日

チュニスカルタゴ国際空港へ向かった。なお、ジェルバ行きチュニスエア・エクスプレスのチェックインカウンターは、空港の中でもかなり奥まった場所にあるので、所見ではそうと分かりにくい。

17:45発のUG008便だが、搭乗口に着いても特に慌ただしさはない。むしろゆったりとした雰囲気が漂っている。

当初予定出発時刻の2時間前にカウンターが開いた。

時間が経っても搭乗の案内がないが、他のローカル客たちは本を読んだりスマホをいじったり、実にリラックスしている。この「急がない文化」こそがチュニジアの魅力の一つかもしれない。ポジティブに考えれば、現代社会で忘れがちな「時間に追われない贅沢」を味わえる貴重な体験だ。

空港で待ちぼうけを食らうことになったので、空港内のレストランで時間潰しを。

結局、到着機の遅れで2時間ほど待つことになった。空港内のチュニジアングルメを食べたり、先の計画を練っているうちに、ようやくボーディング案内があった。

LCC定番のバス移動が始まった。ところが驚いたことに、我々が向かったのはターミナルのすぐ目の前にある飛行機。歩いて1分足らずでたどり着けそうな距離だ。

ターミナルのすぐ目の前に停まっている飛行機に、わざわざ全員バスで移動させられるスタイル

しかし、わざわざバスで乗客全員を運ぶというシステム。これには現地の乗客たちも苦笑いしていた。効率性よりも「システムとしての統一性」を重視する、いかにもお役所的な発想が面白い。こういう「なぜそうなる?」という体験も、海外旅行の醍醐味の一つだろう。

プロペラ機で味わう空の旅

LCCらしい、少し窮屈な印象の機内

機材はATR 72というプロペラ機。最近はジェット機ばかりなので、プロペラ機に乗る機会は貴重だ。エンジン音や振動が懐かしく、まるで昔の空の旅を体験しているような気分になる。

頭上の荷物スペースが小さいため、持ち込み荷物は6kgまでという制限がある。搭乗前にしっかり計測もされるので、パッキングの工夫が必要だ。これもLCC利用の「ゲーム性」として楽しめる要素の一つ(6kgを超える場合は強制的に預け荷物にさせられる)。

機内誌では、ちょうど大阪万博の紹介が載っていた

機内サービスは一切ないが、1時間のフライトなら全く問題ない。むしろシンプルで潔い。窓から見える地中海とチュニジアの大地は美しく、余計なサービスがなくても十分に空の旅を満喫できた。

窓から見下ろすチュニジアの夜景もまた一興

ジェルバ到着

約2時間遅れでジェルバ空港に到着した。事前にレンタカー会社には到着予定時刻を伝えていたため、担当者を長時間待たせることになってしまった。

到着後すぐに謝罪の連絡をしたが、担当者は「大丈夫、慣れてますから」と笑顔で対応してくれた。このような遅延が日常茶飯事のため、現地業者も柔軟に対応してくれるのがありがたい。チュニジアの人々の温かさと寛容さを感じる瞬間だった。

三角運航の秘密を知る

さて、ジェルバ空港では、レンタカー会社のスタッフさんが興味深い話を教えてくれた。Tunisair Expressの便は三角運航をしているため、決まって遅延する便と、全く遅延しない便とがあるというのだ。

つまり、機材が他の空港から遅れて到着すれば次の便は遅延し、順調であれば定刻運航となる。「ジェルバ→チュニス便は遅延しないから安心して」と教えてもらった。まさに「地元の人だけが知る情報」で、これを聞けただけでも価値があった。

復路便も、同じモデルのプロペラ機

実際、8月12日、ジェルバ→チュニス便のUG011便は、スタッフさんの予言通り定刻通りに出発した。しかも、なんと定刻の数分前にチュニスに到着するという快挙を成し遂げた。

パイロットが「定刻より少し早く到着しました」とアナウンスした瞬間、機内から自然と拍手喝采が起こった。この拍手は、遅延に慣れた乗客たちの素直な驚きと喜びの表れだろう。「やればできるじゃないか!」という温かい気持ちが機内に広がった瞬間だった。

少し早い到着に、機内では思わず拍手が上がった

親会社との比較 - それぞれの個性

親会社のTunisairと比較すると、Tunisair Expressは完全にLCC仕様。機内食もなければエンターテイメントもない。しかし、これは決して手抜きではなく、「必要最小限のサービスで低価格を実現する」というLCCの哲学を貫いているだけだ。

1時間のフライトであれば、シンプルなサービスでも全く問題ない。むしろ余計なものを省いた潔さが心地よい。

興味深いのは遅延パターンの違いだ。親会社は予測不可能だが、Tunisair Expressは運航パターンによって遅延する便としない便が比較的予測可能。現地の人がそのパターンを把握しているというのも面白い。

これはある意味で「地域に根ざした航空会社」の証拠とも言える。地元の人々に愛され、理解されている証拠だ。

結論 - チュニジアらしさ満載の愛すべきLCC

Tunisair Expressは確かに「普通のLCC」とは一味違う個性を持っている。フランス語でないと予約できない仕様、二重価格制、フレキシブルすぎる運航スケジュール、そして予測可能な遅延パターン。これら全てが「チュニジアらしさ」の表れだ。

効率性や予測可能性を重視する日本人には戸惑う部分もあるが、それもまた海外旅行の醍醐味。現地の文化や価値観を体験できる貴重な機会として捉えれば、これほど面白い航空会社もない。

Tunisair Expressは決して「安全性に問題のある航空会社」ではない。むしろ「チュニジアらしさを存分に体験できる、個性豊かなLCC」だ。親会社のTunisairが「予測不可能な世界最悪航空会社」なら、Tunisair Expressは「愛嬌たっぷりの地域密着型LCC」といったところだろう。