「スイス旅行だからチューリッヒ空港の便を探そう」「ベルギーに行くならブリュッセル発着で検索しよう」——こんな風に航空券を探していませんか?
実は私も以前はそうでした。目的地がスイスならスイスの空港、フランスならパリの空港、という当たり前の発想で旅行を計画していたんです。ところが、ある時「ドイツの空港を使ってスイスに行った方が5万円も安かった」という話を聞いて、目からウロコが落ちました。
調べてみると、ヨーロッパ旅行には多くの人が知らない「隠れた節約術」があったのです。それが、目的地国の空港にこだわらず、隣国の主要空港を上手に活用するという方法。一見遠回りに思えますが、実際には時間も費用も節約できる場合が驚くほど多いんです。
今回は、この「隣国空港活用術」の全貌を、具体例とともに詳しくご紹介します。
ヒミツはヨーロッパならではの地理的優位性にあり
まず大前提として、なぜこんな方法が成り立つのかを理解しておきましょう。答えは、ヨーロッパの地理的特徴と交通インフラの発達にあります。
コンパクトな国土と短い国境間距離
ヨーロッパの国々は驚くほどコンパクトです。例えば、スイス全土は九州ほどの面積しかありません。ドイツのフランクフルトからスイスのチューリッヒまでは約300キロ、これは東京から名古屋程度の距離です。ベルギーに至っては、隣国オランダのアムステルダムからブリュッセルまでわずか170キロ程度。こうした地理的条件が、隣国空港利用を現実的な選択肢にしているのです。
世界最高レベルの高速鉄道網
そして、この地理的優位性を最大限に活かしているのが、ヨーロッパの充実した鉄道網です。国境を越えて走る高速鉄道が縦横に張り巡らされており、移動自体が快適な観光体験になります。
フランスのTGVは最高320キロで駆け抜け、車窓からはヨーロッパの美しい田園風景が楽しめます。ドイツのICEも同様に快適で、一等車なら機内食並みの食事サービスも受けられます。国境を越える手続きもEU域内では簡素化されており、国内移動とほとんど変わりません。
レールパスで移動費用も心配無用
さらに注目したいのが、ヨーロッパ各国で利用できるレールパス(ユーレイルパスなど)の存在です。これを活用すれば、隣国空港からの移動費用は実質的にかからない、むしろお得になるケースが多いんです。
例えば、21日間有効のユーレイルパスなら、ドイツ・フランス・スイスなど複数国をカバーして約6万円。フランクフルトからスイス各都市への移動はもちろん、滞在中の国内移動も含めて考えると、個別に切符を買うより断然安くなります。レールパスがあれば「隣国空港を使ったら交通費が余計にかかる」という心配は無用です。
隣国空港利用の様々なメリット
地理的条件と交通インフラが整っていることが分かったところで、次に経済的メリットを見ていきましょう。
1. 航空券価格の大幅な差
主要国際空港は競争が激しく、航空券価格が抑えられがちです。例えば、日本からチューリッヒ直行便が25万円の時期に、フランクフルト発着なら18万円ということは珍しくありません。差額の7万円あれば、スイスでの滞在がかなり豪華になりますよね。
2. 便数とタイミングの選択肢
小国の空港は便数が限られており、希望する日程に便がない、または時間帯が悪いことがよくあります。フランクフルトやパリのような大型ハブ空港なら、日本からの便も豊富で、理想的なスケジュールを組みやすくなります。
3. 特典航空券の取りやすさ
マイルを使った特典航空券は、人気路線ほど取りにくいもの。しかし、主要ハブ空港行きなら席数も多く、特典航空券が取れる可能性がグッと上がります。「どうしてもマイルを使いたい」という時の救世主になってくれるでしょう。
4. 旅程の柔軟性
隣国の空港を利用すれば、帰りのルートを変えることも容易です。例えば、行きはドイツの空港を使ってスイス入り、帰りはフランスの空港から帰国なんて芸当も可能になります。
目的地別:具体例とおすすめ代替空港ガイド
それでは、具体的にどの空港を使えばよいのか、実例と節約効果とともに主要な目的地別に見ていきましょう。
スイス旅行の場合
おすすめ代替空港:フランクフルト、ミュンヘン、パリ、ミラノ
フランクフルトからなら北部や中部スイスへ、ミュンヘンからなら南東部へ、パリからなら西部ジュネーブ方面へのアクセスが抜群です。意外な穴場はミラノで、ティチーノ州など南部スイスには最短ルートになることも。
ベルギー旅行の場合
おすすめ代替空港:アムステルダム、パリ、ロンドン
アムステルダムが鉄板選択肢。スキポール空港はヨーロッパ最大級のハブ空港で、日本からの便も豊富です。パリからなら、タリスでわずか1時間20分でブリュッセル到着。ロンドンという選択肢もあり、ユーロスターでの海峡横断は一度体験する価値があります。
オーストリア旅行の場合
ミュンヘンが最有力候補。特にザルツブルクやインスブルックなど西部オーストリアには抜群にアクセスが良く、ウィーンへも鉄道で快適に移動できます。チューリッヒからアルプス越えの絶景ルートを楽しむのも一興です。
フランス旅行の場合
おすすめ代替空港:目的地によって使い分け
目的地によって使い分けが重要です。北部ならブリュッセルやアムステルダム、東部ならフランクフルトやチューリッヒ、南部ならバルセロナが意外に便利。特にスペインの空港利用は盲点で、南フランスへは時として最短ルートになります。
成功させるための実践テクニック
この戦略を成功させるには、いくつかのコツがあります。
検索範囲を広げる
検索の段階で固定観念を捨てることです。目的地を中心に半径500キロ圏内の主要空港をすべてチェックしてみてください。思わぬ掘り出し物が見つかるはずです。
鉄道チケットは早期予約
鉄道チケットは早期購入が鉄則です。ヨーロッパの鉄道会社は早期予約割引が手厚く、3ヶ月前なら正規料金の半額以下になることも珍しくありません。航空券と同時に予約してしまいましょう。
荷物は軽めに
大きなスーツケースでの鉄道移動は多少大変なので、荷物を軽くするか、現地配送サービスの活用も検討してください。
小さな国ほど効果絶大
この戦略は、小さな国ほど威力を発揮します。ルクセンブルクに行くなら、パリ、フランクフルト、ブリュッセルのどこからでも3時間以内。モナコならニース空港が実質的な玄関口ですし、リヒテンシュタインならチューリッヒ一択です。
まとめ:発想の転換が旅を変える
「目的地国の空港」という固定観念を捨てるだけで、旅行の選択肢は格段に広がります。ヨーロッパの地理的コンパクトさと充実した鉄道網という条件が揃っているからこそ実現できる、この大陸ならではの旅行術です。
費用を抑えながら、より快適で柔軟な旅程を組むことができるだけでなく、移動自体も観光の一部として楽しめます。次回のヨーロッパ旅行では、ぜひこの「隣国空港作戦」を試してみてください。浮いたお金で現地での食事をグレードアップしたり、もう一泊延泊したり、きっと旅がより豊かになるはずです。
地図上では遠回りに見えるルートが、実は最もスマートな選択だったりする。それがヨーロッパ旅行の奥深さなのです。