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カサ・バトリョARガイドのもう一つの楽しみ方 - 隠された宝探しゲーム?14の秘密のアイコンの正体を完全解説

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「このマーク、一体何を表しているんだろう?」

バルセロナカサ・バトリョを訪れた多くの方が、ARタブレットの画面を見ながらそう感じたのではないでしょうか。ゴールドチケットやシルバーチケットで手に入れる拡張現実(AR)ガイドには、14の謎めいたアイコンが並んでいます。一見すると抽象的なデザインに見えるこれらのアイコンですが、実は驚くべき秘密が隠されているのです。

音声ガイドを聞きながら館内を巡った後でも「結局あのアイコンは何だったんだろう?」と疑問に思った方、あるいは「どこかで見たような気がするけれど、具体的にはわからなかった」という方も多いはず。そんな謎を抱えたまま帰国された方のために、今回はその答えを明かしていきたいと思います。

ARガイドに仕掛けられた巧妙な宝探しゲーム

カサ・バトリョのARガイドは、当時の家具の様子を再現してくれます。

実は、これらの14のアイコンは単なるメニューボタンではありません。カサ・バトリョの建物内に実際に存在する装飾や建築要素から直接サンプリングされたモチーフなのです。つまり、各アイコンは対応するエリアに実在する装飾パターンを表現しており、館内を巡りながら「宝探し」が楽しめる仕掛けになっているのです。

この発想は、ガウディの建築哲学である「自然との調和」と「細部への徹底的なこだわり」を、現代のAR技術と組み合わせた巧妙な演出といえるでしょう。各アイコンは特定のエリアの音声ガイドを再生するボタンの役割を果たしながら、同時にそのエリアの視覚的な特徴も表現している、二重の機能を持った優れたデザインなのです。

ではひとつひとつ見ていきましょう

それでは、すでにカサ・バトリョを訪問された方のための「答え合わせ」として、そしてこれから訪れる方のための「予習ガイド」として、14のアイコンがどこに隠されているのかを詳しく解説していきます。ある意味「ネタバレ」になってしまうので、予習無しでカサバトリョを訪問したい方は、一旦ブックマークの上このページを閉じ、また旅行後に戻ってきてください!

0番(ひし型):ARガイドの起点となる階段エリア

ガイド番号は0番から始まり、13番まで続いてきます。カサ・バトリョの見学は、まるで潜水艦に乗り込むような感覚からスタート。

ARガイドの起点となる階段エリアの壁には、幾何学的で美しいひし型のタイルが埋め込まれています。このタイルは、後に訪れる光井戸の深海のような青いグラデーション部分でも同じ形を発見できます。ガウディの統一されたデザイン言語の最初の手がかりがここにあるのです。

1番(円形ハニカム型):踊り場の神秘的な窓

階段を上がった踊り場で振り返ると、正円に近い美しいガラス窓が目に入ります。この窓は自然光を柔らかく室内に導き入れる役割を果たしており、ハニカム構造のようなアイコンデザインの元になっています。

今回、夜のショー時間帯に訪問したため全体的に色味が青っぽい写真になりました

楕円型の窓も周辺にありますが、このアイコンのモチーフとなっているのは正円の窓です。光と影の絶妙なバランスを計算し尽くしたガウディの技術力を感じられる瞬間です。

2番(扉型):メインフロアへの期待を高める芸術的な扉

階段を上りきると、いよいよメインフロアへの入り口となる壮大なオークドアが現れます。

この扉は単なる仕切りではなく、ガウディが曲線を巧妙に組み込んだ芸術作品そのもの。有機的で流動的な形状は、まさにタブレットの2番アイコンの形を表現しています。

3番(キノコ型):バトリョ氏のオフィスの象徴的暖炉

メインフロアに足を踏み入れてすぐに目を奪われるのが、この印象的なキノコ型暖炉です。

バトリョ氏のオフィスに設置されたこの暖炉は、機能性と芸術性を完璧に融合させたガウディの代表的な作品の一つ。その独特な形状は、まるで森の中に迷い込んだかのような幻想的な感覚を与えてくれます。3番アイコンの三角形はこのキノコの傘部分を抽象化したものです。

4番(ドーナツ型):隠れた部屋間の装飾窓

メインフロアをさらに奥へ進むと、部屋と部屋を繋ぐ通路に美しいすりガラスの装飾窓を発見できます。

ドア上部に配置されたこのドーナツ型の窓は、入口のオークドアとは異なる繊細な美しさを持っています。色の付いたすりガラス越しに差し込む光が、幻想的な雰囲気を演出する隠れた名所です。

5番(ポンデリング型):天井に浮かぶ海の表現

メインフロアの天井を見上げると、シャンデリアの根元を囲むように、ポンデリングのような形の装飾が施されています。

これは「海の力を表現した完全にうねる天井」の一部で、まるで海中から水面を見上げているような錯覚を覚える美しい装飾です。5番アイコンはこの天井装飾を見事に表現しています。

6番(プロペラ型):都市のオアシス、中庭の床模様

プライベートダイニングルームを通り抜けると、「都市の真ん中の小さなオアシス」と呼ばれるインナーコートヤードに到着します。

午後の陽光を楽しむためにデザインされたこの特別な空間の床には、プロペラのような美しいタイル模様が施されています。周囲のセラミックとガラスで覆われたプランターとの調和が、まるでプライベートガーデンのような贅沢な雰囲気を醸し出しています。

7番(振袖?型):海中世界を望む窓

中庭から再び屋内に戻ると、建築の内側、つまり光井戸の青いグラデーション部分を望む特別な窓があります。

この窓は振袖のようなユニークな形状をしています。窓から見える「海の中のようなエリア」との視覚的な対話が楽しめる、隠れた絶景ポイントです。

8番(建物型):建築全体への理解を深める縮尺模型

メインフロア見学の最終地点には、カサ・バトリョ全体の縮尺模型が展示されています。

これまで細部の装飾に注目してきた訪問者が、最後に建物全体の構造と美しさを俯瞰できる絶妙な配置です。8番アイコンはこの模型の形を表現しており、局部から全体への理解の流れを見事に演出しています。

9番(タイヤ型):屋根裏への期待を高める階段装飾

メインフロアから屋根裏に向かう階段には、手すりに円形のタイヤのホイールのような装飾が施されています。

少し地味なモチーフですが、アイコンを通じた宝探し感覚で、こんな些細な模様にも楽しみを見出すことができるのは素晴らしいですよね。階段を上がりながら手すりに注目することで発見できる、隠れた美しさです。

10番(花型):エグジビションから屋根裏まで続く統一美

鏡張りの波打つ壁が印象的なエグジビションエリアから、60の懸垂アーチが特徴的な屋根裏まで、床全体に美しい花柄のタイル模様が連続して使用されています。

マリークワントのロゴを彷彿とさせるこの花弁のデザインは、広いエリア全体に統一感をもたらし、歩く度に足元の美しさを実感できます。

11番(ヘルメット型):ルーフトップの圧巻「ドラゴンの背中」

カサ・バトリョの象徴とも言える屋上の「ドラゴンの背中」。

様々な色のタイルで表現されたこの屋根は、ファサードの最も特徴的な要素です。一見するとヘルメットにも見える、愛らしくも迫力ある装飾を発見できます。カフェエリアでくつろぎながら、この圧巻の建築美を堪能できます。

13番(水滴型):隈研吾が描く光の詩

12番は一旦飛ばし、13番へ。見学の最後を飾るのは、国際的建築家・隈研吾がデザインした「Stairway into the depths」。

垂れ下がるアルミニウムビーズカーテンが、13番の水滴型アイコンのモチーフとなっています。屋上の明るいアルミから地下の黒へのグラデーションで「天国から地球へ、光から影への物語」を紡ぐこの現代アート作品は、ガウディの光への愛情を現代的に再解釈した傑作です。

実は、12番には驚きの秘密が...

ここまで13個のアイコンを解説してきましたが、実は12番(壺のような形のアイコン)については意図的に説明を省いてきました。なぜなら、この12番には他とは全く異なる驚きの秘密があるからです。

12番のアイコンのありかは、一応案内番号の順番通り、11番と13番の間。懸垂線の屋根裏部屋の窓の形です。しかし、このモチーフには大きな秘密があります。それは、建物内部からは絶対に確認できないということ。この窓は外からしか見ることができない設計になっているのです。

建物最上部の窓枠の形がこのアイコンのモチーフ

つまり、いくら館内を注意深く探し回っても、12番のアイコンと同じ形を発見することは不可能なのです。実際に私自身、スタッフの方に教えてもらって初めてその場所を見つけることができました。

この仕掛けは、カサ・バトリョという建築作品を内部からだけでなく、外観からも愛でてほしいというメッセージが込められているのかもしれません。建物の内外両方を意識させる巧妙な設計で、建築鑑賞の概念そのものを広げてくれる、実に粋な演出です。

次回の訪問で楽しむ新たな発見の旅

このアイコン探しの魅力は、受動的な見学から能動的な探索への転換にあります。音声ガイドを聞きながら、同時に視覚的な手がかりを探すという二重の楽しみが、ガウディの建築への理解を自然と深めていきます。

次回カサ・バトリョを訪れる際は、ぜひこの「隠された宝探しゲーム」を意識してみてください。100年以上前にガウディが込めた自然への愛情と建築への情熱を、現代の拡張現実技術で再発見する貴重な体験となることでしょう。そして12番のアイコンについては、館内見学の後に建物を外から眺めることもお忘れなく。きっと新たな発見があるはずです。