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バルセロナでお得にフラメンコを観るなら「23 Robadors」へ - 観光客が知らないアングラなフラメンコライブ参戦レポート

フラメンコ - スペイン文化の真髄とも言えるこの芸術は、世界中の旅行者を魅了し続けています。情熱的なギターの音色、力強い足さばき、そして感情豊かな歌声が一体となって紡ぎ出される瞬間は、一度体験すると忘れられません。

バルセロナを訪れる多くの観光客は、有名な「タブラオ」と呼ばれるフラメンコショーに足を運びます。しかし、そこで待ち構えているのは、時に50ユーロを超える高額なチケット代。特に足元の動きがよく見える特等席ともなれば、さらに追加料金が発生することも珍しくありません。観光客向けの有名スポットほど料金は高騰し、30ユーロ程度の比較的リーズナブルな席があったとしても、ステージからは遠く、パフォーマンスの細部まで楽しむことは難しいものです。

そんな中、地元の人々に愛される「隠れ家」とも言えるフラメンコスポットが存在することをご存知でしょうか?今回は、観光ガイドブックでは紹介されていない、ローカルな雰囲気の中で本格的なフラメンコを格安で楽しめる場所「23 Robadors」をご紹介します。

知る人ぞ知るアングラなフラメンコシーン

 
 
 
 
 
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バルセロナには、ジャズバーやライブハウスで定期的に開催されるフラメンコイベントが数多く存在します。これらは観光客向けの大型ショーとは一線を画し、とにかく「安い」のが特徴。わずか5〜10ユーロ程度で、プロフェッショナルなパフォーマンスを間近で体験できるのです。

会場は一般的に小規模で、演者との距離が非常に近いことも魅力の一つ。決して質が劣るわけではなく、むしろインディーシーンで活躍する実力派アーティストたちの生々しく情熱的なパフォーマンスを楽しむことができます。確かに観光客向けに有名なタブラオのような豪華な装飾や設備はありませんが、それを補って余りある「アングラ感」と親密な空間が、フラメンコ通の心を強く掴むのです。

23 Robadorsへの道のり

実際に私が訪れたのは、バルセロナのラバル地区に位置する「23 Robadors」。この地域は、正直に言って治安の良さでは知られていません。娼婦やホームレスの姿も見られる、いわゆる「裏通り」の雰囲気が漂う場所です。当然ながら、観光客らしき人は私以外にほとんど見当たらず、ほぼ全てが地元の人々でした。

会場の入口側半分はカウンター席

訪問した日の入場料は7ユーロ。カウンターで参加費を支払いながら、通常のライブハウスと同様にドリンクをオーダー。せっかくのスペイン体験なので、地元カタルーニャ地方のクラフトビールを選びました。

カタルーニャならではのドリンクも多数あり、早くも心躍る

会場の雰囲気

奥へ進むと小さなライブ会場が

23 Robadorsの会場はこじんまりとしており、最大でも30人ほどしか収容できないサイズ。席は完全に早い者勝ちで、一番前の席から順に埋まっていきます。私は開演直前に到着したため後方の席しか空いていませんでしたが、「後方」と言ってもステージまでの距離はせいぜい5メートル程度。しかも、後方の椅子は高さがあるため、ステージ全体を見渡すことができる絶好のポジションでした。

観客の多くは20〜30代の地元の方々。彼らは日常的にこうしたイベントに足を運ぶフラメンコ愛好家のようで、演奏前から期待に満ちた会話が飛び交っていました。観光客向けの洗練された雰囲気とは異なり、まるで友人の家に集まったかのような親密で温かい空気が流れています。

本場のアンダーグラウンド・フラメンコ体験

いよいよ演奏がスタート。伝統的なフラメンコは通常、ギター、歌手、ダンサーの3人編成で行われることが多いのですが、この日のユニットはピアノとカホン(箱型の打楽器)も加えた5人編成。一瞬で会場の空気が変わり、観客全員の視線がステージに釘付けになりました。

フリジアンモードの神秘的な響きを持つフラメンコギターの音色に、コンテンポラリージャズの手法を取り入れたピアノが絶妙に絡み合います。王道のよくあるフラメンコとは一線を画した、さすがはジャズバーならではのアングラな催し。「フュージョン・フラメンコ」とでも呼ぶべきその音楽に、私は瞬く間に引き込まれていきました。

毛色の少し異なるピアニストのお兄さんが、小粋なアレンジと言わんばかりに、時折ジャジーなテンションコードを差し込んでいくものの、全体的には伝統的なフラメンコの骨格はしっかりと保たれています。独特のビブラートを効かせた歌声、手拍子による複雑なポリリズム、そして何より圧巻だったのは、ダンサーの気迫に満ちたステップ。小さな会場ゆえに、その足音と振動が直接体に伝わってくる臨場感は、大きなホールでは決して味わえないものでした。

曲が終わるたびに湧き上がる拍手と共に「Olé(オレ)!」という賞賛の声、「歯笛」がピーピーと鳴り響きます。この鋭い音が会場中に響き渡る様子は、まさに現地の文化に溶け込んだ瞬間でした。

知っておくべき注意点

さて、このような地元密着型のライブハウスで上手にフラメンコを楽しむ際には、いくつかの注意点があります。

まず、支払いに関して - 多くの場合、キャッシュオンリーです。クレジットカードが使えると思って現金を持たずに行くと、入場できない可能性があるので注意しましょう。

次に立地について - こうしたアンダーグラウンドな会場は、必ずしも治安の良いエリアにあるとは限りません。特に夜間の一人歩きは注意が必要です。行き帰りは明るい通りを選んで歩くか、可能であればタクシーを利用することをお勧めします。

また、席は完全に早い者勝ちです。良い位置で見たい場合は、開演の30分前くらいに到着するのが理想的。ただし、あまりに早く行きすぎると、地元の若者たちがスペイン語で盛り上がっている中、一人寂しく待つことになるかもしれません。

そして、フラメンコイベントは毎日開催しているとは限りません。日によってはファンクセッションだったり、ジャズライブだったり。事前にホームページでスケジュールを確認しておくことをお勧めします。

最後に雰囲気について - 一般的な観光客向けの施設と比べると、かなり「アングラ感」が強いです。煙草の煙が漂い、照明は暗く、トイレは必ずしも清潔とは言えないかもしれません。しかし、そういった「生」の雰囲気を楽しめる心構えがあると、より満喫できるでしょう。

まとめ - 本物のフラメンコ体験を求めて

バルセロナでフラメンコを楽しむ方法はさまざまですが、23 Robadorsのような地元密着型の小さな会場で体験するフラメンコには、大型のショーにはない魅力があります。価格の安さはもちろんのこと、アーティストとの距離の近さ、そして何より「観光客向け」ではない、地元の人々に愛される本物の芸術に触れられることが最大の魅力です。

フラメンコは単なる「ショー」ではなく、スペインの人々の魂が込められた伝統芸能。その真髄に触れるなら、派手な広告や豪華な会場よりも、地元の人々の熱気に包まれた小さな空間の方が、より深い感動を得られるかもしれません。

次回バルセロナを訪れる機会があれば、ぜひ観光ガイドブックを一度閉じて「知る人ぞ知る」スポットで、忘れられないフラメンコ体験を味わってみてください。心の奥底に響く情熱の旋律が、きっとあなたのスペイン旅行をより豊かなものにしてくれるはずです。