
ブハラからヒヴァへ寝台列車で向かうとき、頭を悩ませるのが「空白の時間」をどう過ごすかだ。
以前、ウズベキスタン鉄道に関するレポートでも触れたが、現在ブハラ発ヒヴァ方面の鉄道は、早朝5時台か7時台の便しかない。夜行列車があれば話は早いのだが、残念ながら現状はそうなっていない。ならばいっそ1泊追加でホテルを取れば良いかというと、それも微妙だ。チェックアウトが翌朝になってしまう場合は費用対効果が悪すぎるし、深夜に静かなブハラ旧市街のゲストハウスをたたき起こすのも申し訳ない。
カフェやレストランで時間を潰すという手も、夜には閉まっているところがほとんどで現実的ではない。季節によっては夜間の気温も下がるため、旧市街をウロウロし続けるのは体力的にもしんどい。
余裕をもって駅に着いておくにしても、1時間前で十分すぎるくらいだ。それ以上早く着いても待合スペースで椅子を温めるだけになる。なお、ウズベキスタン鉄道は遅延傾向にあるので、多少気持ちに余裕を持っておく程度で十分ちょうどいい。
「では結局どうすればいいのか」。これは旅行スタイルによって答えが変わる。完璧でオールマイティな正解はない。実体験をもとに、現実的な3つの選択肢を整理した。
方法①:サウナ・スパで体を休める
ブハラはハマム文化が根づいている街だ。シルクロードの交易都市として栄えた歴史的な背景から、体を清め、癒やすという文化が日常の中に息づいている。旧市街には伝統的なハマムが複数あり、現代的なサウナ&マッサージ施設も市内に点在している。

そんな中、実際に夜から早朝にかけての営業を確認できた施設として、Сауна ОАЗИС(Sauna Oasis)がある。個室制で、シャワー・サウナ・水風呂が揃っており、オプションでマッサージも付けられる。口コミを見る限り清潔さや施術の質については概ね好評だ。マッサージ込みで1人あたり185,000〜350,000スム前後という声が多く、価格帯としては旧市街のハマムよりリーズナブルだ。
ただし、この施設については予約に際して大きな注意点がある。実際に店舗のスタッフさんに、予約のお願いをしてみたところ、深夜から早朝の時間帯は、6人以上などのグループ予約でないと受け付けてもらえないとの回答だった。
ひとり旅や少人数での旅の場合は、当日いきなり乗り込んでも断られる可能性が高いだろう。また、事前予約はロシア語またはウズベク語での電話対応が基本で、英語で予約をしたい場合には現地での直接やり取りが必須だ。事前にホテルスタッフに電話を頼む、もしくは直接店頭に行って確認するのが現実的な手段だ。
このほかに朝まで対応しているハマムやスパが市内にあるかどうかは、筆者自身は確認できていないが、いずれにせよ、ブハラに来たなら滞在中の早めの時間帯にでもハマムやサウナを一度体験しておくことは強くおすすめしたい。
方法②:ナイトクラブで朝まで飲む
意外に思うかもしれないが、ブハラはクラブ文化がある程度発達している街だ。イスラム文化圏ではあるが、ウズベキスタンは比較的リベラルな雰囲気で、お酒が飲めてDJが回しているクラブが夜通し営業している。タシュケントやサマルカンドと比べてクラブシーンの規模は控えめと言われているが、ゼロではない。

https://yandex.com/maps/org/magic_club_bukhara/210125701901/
ナイトクラブで踊りながら朝を迎えるというのは、それ自体がひとつの旅の経験だ。特にクラブ遊びが好きな旅行者にとっては、早朝便待ちの時間を「ロス」ではなく「プラス」に変えられる選択肢になりうる。
ただし、下調べと注意が必要な選択肢でもある。ブハラには質のよくない店や、実態がよくわからない業態のお店も混在しているようで(中にはストリップクラブのような実態もある模様)、事前にレビューや評判をしっかり確認してから行くことをおすすめする。また、荷物管理にも十分気をつけたい。現地語がわからない外国人観光客の一人でクラブ慣れしていない人にはハードルが高い手段なので、そういう方には素直に他の選択肢を選ぶことをおすすめする。
方法③:レンタカーの車内で仮眠する【筆者の実体験】

これが、おそらく最も現実的な選択肢、そして今回の旅で筆者自身が実際に選んだ方法だ。
夜はブハラ旧市街で食事を楽しんだ後、少し市街地を離れたマドラサの前に車を停めて、後部座席に横になった。アラームをかけて、1〜2時間ほど仮眠をとる。出発時間に合わせて車を返却し、その後そのまま駅へ向かうだけだ。
これが意外なほど快適で、合理的だった。
まず宿泊費がかからない。数時間しか使えない時間のためにホテル代を余分に払う必要がない。深夜のゲストハウスをたたき起こす必要もない。次に体力を回復できる。深夜の旧市街をウロウロし続けるより、横になって少しでも体を休めるほうが、翌日の行動体力に大きな差が出る。そして移動の自由度が高い。駅まで自分のペースで向かえるし、荷物も車内で管理できる。
なお、ウズベキスタンでのレンタカー事情については別記事(全3回)で詳しくお伝えしている。レンタカーを旅の選択肢として考えている方はぜひ参照してほしい。
どの方法が自分に合っているか
正直に言うと、早朝便待ちを完璧に解決できる「最強の一手」は存在しない。旅行スタイルや同行者の有無、滞在時期、そして何を旅に求めているかによって、向いている選択肢は人それぞれだ。
| 方法 | こんな旅行者に向いている | 費用感 | 事前準備 |
|---|---|---|---|
| サウナ・スパ | のんびり派、体を積極的に休めたい人 | 中〜高(1人15〜35万スム前後) | 必須(予約確認が必要) |
| ナイトクラブ | 夜遊び好き、クラバー系 | 中(飲食代次第) | 要・店の事前リサーチ |
| レンタカー仮眠 | レンタカーで旅している人 | ほぼ無料 | 防寒対策と駐車スペースの確認 |
サウナ・スパは「事前に予約が通れば」という前提条件があるため、少人数での旅では計画通りにいかない可能性がある点を必ず念頭に置いておこう。グループ旅行者なら最もリラックスできる選択肢だ。
ナイトクラブはクラブ文化に慣れていてノリで乗り越えられる人なら面白い経験になるが、慣れない人やひとり旅の人には決してすすめない。
レンタカー仮眠は費用面・体力面・自由度の観点から最もコスパに優れた方法だと感じたが、そもそもレンタカーを借りていなければ使えない手段だ。
どれを選ぶにしても、早朝5時前後に余裕を持って駅へたどり着けるよう、逆算してスケジュールを組んでおくことが最低条件だ。繰り返しになるがウズベキスタン鉄道は遅延が珍しくない。多少待つくらいの気持ちで臨んでおくと、精神的にずっと楽になる。
ブハラの夜は、旧市街に静かな闇が落ちると驚くほど静まり返る。その静寂の中で、それぞれのやり方で夜を明かし、夜明けとともにヒヴァへ向かう——それもまた、シルクロードの旅らしい一幕となることだろう。

本記事は2026年の実体験をもとに執筆しています。施設の営業時間・料金・条件は変更になる場合があります。最新情報は必ずご自身でご確認ください。