前編では、チェンマイ到着から夕刻のプレイベントまでをお伝えしました。後編では、いよいよこの日最大のハイライトであるコムローイ一斉打ち上げの瞬間と、地元の人々や世界中からの観光客との交流、そしてイベント後の余韻について詳しくレポートします。また、実際に参加して分かった注意点や費用についても実用的な情報をお伝えします。
メインイベント:コムローイ打ち上げの瞬間

夜が近づくと、いよいよメインイベントの時間です。ターペー門周辺の会場では、市の行政スタッフによりコムローイが無料で配られました。私たちも一人一つずつ手に取りました。紙でできた小さな熱気球のような形で、底部にはろうそくのような火種が付いています。

係の人から簡単な説明を受けた後、願いを込めてコムローイを準備します。参加者は各々、家族の健康、仕事の成功、世界の平和...様々な想いをコムローイに託します。
そして、周囲とタイミングを合わせて打ち上げの瞬間がやってきました。数百個のコムローイが一斉に夜空に舞い上がります。

この瞬間は本当に幻想的でした。オレンジ色に光るランタンが夜空に浮かび上がっていく様子は、まるで星が空に帰っていくようで、言葉では表現できない美しさがありました。
注意点として、チェンマイ空港周辺は飛行安全のためコムローイ打ち上げ禁止区域に指定されており、違反すると重い罰則があります。しかし、ターペー門周辺の公式会場は許可エリア内のため、安心して参加することができました。
観光客も一体となる特別な体験
街中の無料イベントの素晴らしいところは、観光客も地元の人々も関係なく、みんなが一体となって参加できることです。隣にいたタイ人の家族が英語で話しかけてくれたり、ヨーロッパからの観光客と一緒に写真を撮ったりと、国境や言語の壁を越えた交流が自然に生まれました。
特に印象的だったのは、コムローイを上げた後に、会場の人々が自然発生的に手を合わせて祈りを捧げる瞬間でした。宗教や文化的背景が異なる人々が、同じ空を見上げて平和を願う姿は、とても感動的でした。

ターペー門周辺の公式会場には、観光客だけでなく地元のタイ人ファミリーも多く参加していました。小さな子供たちが興奮してコムローイを見上げている姿を見ていると、これが単なる観光イベントではなく、地域に根ざした本物の文化的行事なのだということを実感しました。
イベント後のチルアウト:お祭りムードは続く
メインの打ち上げが終わった後も、お祭りムードは続きました。道端に座って余韻に浸る人々、露店で軽食を買って楽しむ人々、川沿いでのんびりと過ごす人々...それぞれが思い思いの方法でこの特別な夜を楽しんでいました。

私たちも通り沿いのベンチに座って、しばらくチルアウトしました。空にはまだいくつかのコムローイが浮かんでおり、その幻想的な光景を眺めながら、この日の体験を振り返りました。街のあちこちから聞こえてくる音楽や笑い声が、祭りの余韻を盛り上げてくれます。
なお、ピン川沿いでは灯籠流し(ロイクラトン)も同時に行われており、市庁舎前周辺では20時から「音と光のショー」も開催されていました。複数の会場で異なる楽しみ方ができるのも、チェンマイのイーペン祭りの魅力の一つです。

交通事情と注意点
イベント当日は混雑がかなり激しくなります。特にターペー門周辺のメイン会場や川沿いエリアは人で溢れかえるため、レンタカーでの移動はお勧めできません。実際、大パレード時にはターペー門から市庁舎までのルートとその周辺道路が車両通行止めになるため、15時頃から交通規制が始まります。
徒歩での移動が基本となるため、ホテル選びは立地が重要です。私たちが宿泊したナイブティックハウスは、主要会場まで徒歩圏内で非常に便利でした。
また、夜間のイベントとなるため、貴重品の管理には十分注意が必要です。混雑した場所ではスリなどのリスクもあるため、必要最小限の荷物で参加することをお勧めします。
重要な注意点として、チェンマイ空港を中心とした半径4.6kmの区域と滑走路延長線上18.5kmの範囲はコムローイ打ち上げ禁止区域です。違反すると5年以下の拘束刑、20万バーツ以下の罰金という重い処罰があるため、公式会場以外では絶対にコムローイを上げないよう注意が必要です。
服装と持ち物のアドバイス
11月のチェンマイはバンコクと異なり比較的涼しく、夜間は少し肌寒く感じることもあります。薄手の長袖シャツやカーディガンがあると良いでしょう。また、会場は屋外で足場が悪い場所もあるため、歩きやすい靴を選ぶことが大切です。
持ち物としては、スマートフォンの充電器(モバイルバッテリー)、飲料水、ウェットティッシュなどがあると便利です。コムローイの打ち上げ時には両手が塞がるため、小さなバッグかウエストポーチがお勧めです。
カメラについては、夜間撮影となるため、ある程度性能の良いカメラがあると美しい写真が撮れます。ただし、メインイベント中は撮影よりも実際の体験を優先することをお勧めします。その瞬間の感動は写真では伝えきれないものがあります。
他の無料会場との比較
今回はターペー門周辺を選びましたが、チェンマイには他にも魅力的な無料会場があります。
ピン川沿い(市庁舎周辺):灯籠流しがメインで、水上ステージでの「音と光のショー」も楽しめます。川沿いのレストランでロマンチックな食事も可能ですが、事前予約が推奨されます。
ノーンブアプラチャオルアン公園:2025年は工事で開催予定なしとのことですが、通常時は個人でのコムローイ上げが可能な貴重な会場です。ローカルな雰囲気を楽しみたい方にお勧めでした。
各寺院:プラシン寺院、チェディルアン寺院などでも独自の儀式が行われ、より宗教的で厳粛な雰囲気を味わえます。
それぞれに特色があるため、滞在日数に余裕があれば複数の会場を体験してみるのも良いでしょう。
時期とタイミングについて
イーペン祭りは毎年11月の満月前後に開催されますが、正確な日程の発表は直前になることが多いです。2025年の満月は11月5日(水)で、メインイベントは11月4日〜6日の3日間になる予定です。
各日の特色:
- 前日:開会式、許しを請う儀式、装飾点灯
- 満月:各寺院での宗教的儀式、小パレード
- 翌日:大パレード(最も華やか)
私たちが参加したのは満月の日でしたが、大パレードを見たい場合は翌日もお勧めです。ただし、翌日は最も混雑するため、ゆったりと楽しみたい方は前日や満月の日が良いでしょう。
まとめ:一生忘れられない特別な体験
チェンマイのイーペン祭り参加は、間違いなく一生忘れられない特別な体験となりました。数百個のコムローイが夜空に舞い上がる瞬間の美しさ、世界中から集まった人々との一体感、タイ北部の伝統文化に触れる貴重な機会...すべてが素晴らしい思い出です。
特に街中の無料イベントは、観光地化された体験ではなく、より地域に根ざした本物の文化体験ができる点が魅力的でした。言葉の壁を越えて人々とつながることができ、旅の醍醐味を存分に味わうことができました。
チェンマイのイーペン祭りは、単なる観光イベントを超えた、心に深く刻まれる特別な体験を提供してくれる祭りです。皆さんもぜひ、この幻想的な光景を実際に体験してみてください。