前回の記事では、観光客で賑わう雲水謡(云水谣)土楼群をご紹介しました。今回は、そこから車で反時計回りに進んだ先にある、より静かな雰囲気の順裕楼(顺裕楼)と河洪土楼群への訪問をレポートします。
前回記事はこちらから
最大の円形土楼、順裕楼(顺裕楼)

福建省南靖県書洋鎮石橋村(南靖县书洋镇石桥村)に位置する順裕楼は、1927年に建設された巨大な円形土楼です。外径73.9メートル、内径70.84メートルという規模を誇り、各階72室、4階建て計288室に加え、内部にさらに81室を有する計369室を擁する世界最大級の土楼です。2016年9月には「世界一室数の多い(単層)通廊式円形土楼」としてギネス世界記録にも認定されました。
背山面水(山を背に水に面する)の立地で、「王中之王(王の中の王)」との異名を持つこの巨大建築は、4,977.97平方メートルもの広大な敷地面積を有しています。
静寂に包まれた巨大建築

雲水謡の賑わいとは打って変わり、順裕楼を訪れた時は驚くほど静かでした。観光地として整備されていないありのままの土楼のため観光客の姿は全くなく、何超さんの話では住民も徐々に減少し、過疎化しつつあるとのことでした。

多くの土楼では中庭の中心に井戸や「軒楼」「祖堂」と呼ばれる建物が配置されているのですが、順裕楼の場合は広大な敷地を反映してか、中央は整備されていない野原のような空間が広がっています。その広場では、土楼の新たな「住人」となった鶏たちが自由に闊歩している姿が印象的でした。何超さんと「この土楼はすっかり鶏に占領されたようだね」と笑い合ったことが思い出されます。

観光地化が進んでいないため、土産物店などは一切ありません。しかし、それゆえに土楼本来の姿をじっくりと味わうことができます。


せっかくなので住民のおじさんに尋ねて、上空から建物の全容を撮影することにしました。とはいえ、余りにも巨大な建物のため、制限高度ギリギリまで機体を上げてようやく全体を収めることができるほどでした。上空からの眺めは、この建築の規模の壮大さをより一層際立たせてくれました。


撮影中、どこからともなく現れた住民のおばあさんが、いつもの日課のように家事を始めました。鶏たちが自由に走り回る傍らで日常の暮らしを営む姿に、観光地化されていない土楼ならではの光景を見る思いがしました。

「北斗七星」の異名を持つ河洪土楼群

次に向かった河洪土楼群は、福建省南靖県書洋鎮曲江区(南靖县书洋镇曲江圩)にある河坑自然村に位置しています。元朝中期(1308年-1338年)から1960年代にかけて、700年以上の歳月をかけて建設された張氏一族の集住地だと言われています。
この土楼群は14の土楼から構成されており、方形の朝水楼、陽照楼、永盛楼、繩慶楼、永榮楼、永貴楼、円形の裕昌楼、春貴楼、東升楼、暁春楼、永慶楼、裕興楼、そして五角形の南薫楼などが、まるで二つの北斗七星のように配置されています。方円相配(方形と円形が調和し)、陰陽相合(陰と陽が調和する)という思想が反映された配置から、「仙山楼閣」「北斗七星」という異名で呼ばれています。
知る人ぞ知る絶景スポット

この河洪土楼群は、旅行好きの間で高い評価を得ている雑誌「TRANSIT」の創刊号の表紙を飾った場所としても知られています。土楼群の近くに、その美しい景観を一望できる展望台があるので、ここを訪れた際にはセットで行っておきたいところ。

ついでに、機転の利くスタッフさんから「せっかくドローンがあるのだから、それを使って上空から撮影してみては?」という提案を受けたので、土楼を上から覗いてみることに。

ここも観光客は少なく、土産物店の出店もまばらでした。おそらく、中国国内でのドラマなどでの露出度の違いが、観光客の数に影響しているのかもしれません。
いかがでしたでしょうか?
次の目的地への移動時間の都合で、河洪土楼群の散策は比較的短時間となりましたが、雲水謡での賑わいとは対照的な、静かで落ち着いた雰囲気の順裕楼と河洪土楼群での時間は、観光地化されていない土楼の魅力を十分に感じさせてくれました。
次回は、この日最後の目的地となった下版村での訪問についてお伝えする予定です。
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