
以前の記事で、中国では一般的なタクシーや配車アプリに比べて、順風車という相乗りシステムが非常に安価である、という話をお届けした。
しかし、「中国語の画面で本当に使えるのか?」「トラブルはないのか?」という不安もあるだろう。
今回は、実際に深夜22時過ぎの虹橋空港でDiDi順風車を使って上海虹橋空港から浦東空港まで移動した体験をもとに、具体的な操作手順と、使ってみて初めて分かった注意点を詳しく解説する。
順風車とは何か?
順風車について、まず基本的な仕組みを理解しておく必要がある。
DiDiなどの配車アプリには複数のサービスがあり、それぞれ性格が異なる。「快車」(一般的な配車サービス)や「専車」(ハイグレード車両)は、プロのドライバーが専業で運転するタクシーのようなものだ。
一方、順風車は「同じ方向へ向かう一般人が、自家用車でついでに乗せてくれる」カープールサービスだ。ドライバーは普通の会社員や主婦で、自分が移動するついでに同じ方向へ行く人を拾って、ガソリン代程度を受け取る仕組みになっている。
※ただし、読者様からの指摘によると、これはあくまで理念上の話であるとのこと。実際には、商売として順風車サービスに参入している事業者が大半である模様。
特徴として、料金が劇的に安い。例えばタクシーや快車が250元以上かかるルートでも、順風車なら100元前後で移動できる、なんて具合だ。
中国では日常的に使われているサービスだが、外国人旅行者にとってはハードルが高いと感じられることも多い。今回はそのハードルを実体験をもとに解説していく。
事前準備
さて、今回は外国人旅行者でも利用ハードルが比較的低い「DiDi順風車(滴滴顺风车)」を例に話を進める。
DiDi順風車を使うには、Alipay(支付宝)が必須だ。
外国人がパスポート+国際クレジットカードで滴滴順風車を使用する場合、Alipay内の「滴滴順風車」というミニアプリから起動する必要があるためだ。
また、追加料金の支払いに備えて、WeChat Pay(微信支付)も登録しておくと安心だ。今回、追加料金の支払いはWeChat Payで行った。
順風車ミニアプリを起動

では、配車手順を説明していこう。まず、Alipayアプリを開き、画面上部の検索窓に「順風車」と入力する。検索結果には「哈啰順風車」「滴滴順風車」「高徳順風車」などが表示されるが、今回は「滴滴順風車」を選択。タップするとミニアプリが起動し、地図画面が表示される。
画面は完全に中国語だが、話者でなくても、Google翻訳のカメラ機能やスクリーンショット翻訳を使えば意味は理解できるだろう。
出発地と目的地を入力

地図画面の上部に2つの入力欄がある。上の欄が出発地、下の欄が目的地だ。
今回は、目的地に「上海浦東国際機場2号航站楼」(上海浦東国際空港第2ターミナル)と入力。英語で入力してもある程度認識される。候補が表示されるので、該当する場所を選択する。

目的地を入力すると、出発時刻を選択するポップアップが表示される。日付と時刻をスクロールホイールで選び、確認する。

次に料金選択画面に移る。「拼座」(相乗り)を選ぶと、他の乗客と相乗りで料金は50元前後。「独享」(貸切)を選ぶと、他人と乗らずに快適に移動できて67元前後。画面には「拼座可能増加出行的時間、趕飛機建議選択独享」(相乗りは時間がかかる可能性があるため、飛行機に間に合わせたい場合は独享を推奨)という注意書きもある。
深夜で時間を読みやすくしたかったため、私は独享を選択した。
画面下部に出発時間の幅、乗車人数、備考欄が表示される。
問題なければ、画面最下部の大きな緑色のボタンをタップして予約を確定する。
事前決済

予約を確定すると、「当前預約人数較多,為確保順利出行,請提前預付車費」(予約が混み合っているため、スムーズな利用のため事前決済を推奨)というポップアップが表示されることがある。
ここで表示される金額(今回は67元)を支払う。支払い方法はAlipayに登録したクレジットカードから自動引き落とし。
ここで重要な注意点がある。この金額は実際の最終支払額ではない。場合によって、追加料金が発生することがある。
マッチングとドライバー情報の確認

決済が完了すると、「加載中...」(読み込み中)という画面が表示され、数分後にマッチングが成立する。ドライバーが予約を受け入れたことを知らせるポップアップが表示される。
ドライバーの詳細情報が表示される。車種、ナンバープレート、これまでの配車実績などが確認できる。そして、この時点で正確なピックアップ場所が表示される。
【重要】ピックアップ場所は出発地の目の前とは限らない

マッチング後、地図上でピックアップ場所が表示されたが、それは虹橋空港ではなく、「虹橋站-網約車P9地面(1F)上客点」(虹橋駅ライドシェア専用エリアP9・1階乗車ポイント)だった。
つまり、虹橋空港ではなく、隣接する虹橋駅のライドシェア専用エリアが乗車場所として指定されたのだ。空港から約1km離れている。
バックパッカーとして大きなバックパックを背負いながら、深夜に1kmを歩くのは正直きつかった。時間に余裕がない場合、この距離は致命的になる可能性もある。
空港や大規模駅では、ライドシェア専用エリアが離れた場所に設定されることがある。マッチング後すぐに地図でピックアップ場所を確認し、必要なら歩く準備をしておくことが重要だ。
【難関】駐車場内でドライバーを見つける

虹橋駅のP9エリアに到着したが、ここで新たな問題に直面した。アプリ上では車の位置が「P9エリア」としか表示されず、立体駐車場のどの階、どの位置にいるのかが全く分からない。地図上では車のアイコンが表示されているが、それは大まかなエリアを示しているだけだ。
ドライバーとメッセージでやり取りしながら、お互いに駐車場内を探し回った。「1階の入口近くにいる」「こっちは出口側にいる」といったやり取りを繰り返し、電話で連絡を取り合うことで、ようやく合流できた。

特に、立体駐車場のような複雑な場所では、位置が分からない。ドライバーとリアルタイムでやり取りする必要があり、電話が使えればベストだが、中国語に自信がない場合はチャット+翻訳アプリの組み合わせで何とかするしかない。時間と手間がかかることは覚悟しておくべきだ。
料金交渉はメッセージで事前に
今回、ドライバーからはメッセージで「100元」と伝えられた。事前に67元を決済していたので、追加で33元が必要ということだ。
画面に表示されていた「67元」は、あくまで「超値」(特別割引価格)であり、実際の料金ではなかった。追加料金についてはドライバーとメッセージでやり取りし、乗車中にWeChat PayのQRコードをスキャンして支払った。
つまり、最終的な支払額は100元。それでもタクシー(200〜250元)の半額以下だが、事前に想定していた金額とは少し異なった。
アプリに表示される「超値」価格は目安と考え、実際の料金はドライバーとの交渉や距離によって変動する可能性があることを理解しておく必要がある。
乗車と移動

ナンバープレートと車種を確認し、該当する車を見つけたら乗車。アプリ上でルートが表示されているため、ドライバーはそれに従って運転する。
深夜で渋滞もなく、約1時間程度で浦東空港T2に到着した。

到着すると、追加料金をWeChat Payで支払って終了。ドライバーと合流さえしてしまえば、その後これといったトラブルはなく、シンプルなやり取りで完了した。ドライバーとの合流にかかった時間を合わせても、配車実行から1時間半程度の合計時間。流しのタクシーで移動するよりも多少時間はかかったが、十分な結果だった。
まとめ:順風車の利用には、ただし事前知識が必須
今回、初めて順風車を利用してみて分かったことは、事前に知っておくべきポイントさえ押さえれば、十分に活用できる交通手段だということだ。
深夜の空港間移動という高額出費を大幅に削減できた。バックパッカーとして旅費を抑えたい立場からすれば、これは非常に魅力的だ。ただし、使ってみて分かった注意点もいくつかある。特に、ドライバーとのやり取りは必須で、中国語がある程度話せるか、チャット+翻訳アプリを駆使する覚悟が必要だ。
一度経験してしまえば、次回はもっとスムーズに使えるだろう。時間に余裕があり、少しの手間を惜しまないなら、順風車は非常にコスパの良い移動手段だ。次回中国国内で移動が必要になった際は、ぜひ試してほしい。