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【シナイ山①出発編】シナイ山は単独で登頂できるのか?登山ルールやガイド帯同義務について現地で徹底検証してみた

モーセが神から十戒を授かったとされる聖なるシナイ山(ガバル・ムーサ、あるいは正則アラビア発音でジャバル・ムーサ)。エジプト・シナイ半島の南端に位置するこの山への登頂は、多くの旅行者にとって憧れの体験です。私も長年この山への登頂を夢見ていた旅人の一人。しかし、せっかくならツアーの制約に縛られず、レンタカーで自力で行きたいと考えていました。

ところが、インターネット上には様々な怪しい情報が飛び交っており、「外国人の単独アクセスは不可能」という声も。果たして本当に可能なのか?砂漠の真っ只中で立ち往生するリスクを冒してまで挑戦する価値はあるのか?今回は現地で徹底検証してみました。

まことしやかにささやかれる風説

旅行計画を立てる中で、まずTripAdvisorや各種旅行ブログを隅々まで調査しました。そこで目にしたのは「シナイ山はガイド無しで登ることが許されない」という情報でした。さらに、「外国人がレンタカーで自力でシナイ山(聖カタリナ)へ行くことは不可能」という記事も数多く見つかりました。

www.caitkontalis.com

https://www.tripadvisor.com.au/ShowTopic-g297555-i9225-k7925008-Renting_a_car_in_sharm_el_sheikh_to_drive_to_Mt_Sinai_Ras-Sharm_El_Sheikh_South_Sinai_Red_S.html

これらの記事によると、途中の道路にいくつか検問があり、特別な許可を得た車でないと通過できないのだとか。シナイ半島の険しい山道で検問に引っかかり、引き返しを余儀なくされる外国人ドライバーの姿が目に浮かびます。しかし、よく読んでみると情報が古かったり、信憑性に欠けるものが多いことに気づきました。

どの記事も、あくまでツアーを利用して行った人たちの推測や伝聞であり、自分たちで実際にレンタカーで行こうと試したわけではありません。

一般的には、シャルムやダハブ発のツアーに参加するのが現実的な登山方法だとされています。しかし、ツアーの場合、予め日時が限定されている上、30人くらいの団体で動かなければならず、他者とのペースを合わせたり、山頂で場所の取り合いになったり、様々な不自由が生まれます。静寂な砂漠の夜明けを、騒がしい団体客に囲まれて迎えるのは本意ではありません。かといって、プライベートツアーだと当然かなり高くつきます。

徹底的な事前調査

そこで、日本語、英語、そしてアラビア語で徹底的に情報調査を行いました。現地レンタカー会社や聖カタリナ修道院にも事前問い合わせを行い、得られた情報の信憑性を慎重に吟味しました。

聖カタリナ修道院

その結果、どうやら事前に必要な手続きさえ済ませておけば、レンタカーで聖カタリナへ行くことは可能だということがわかりました。登山に当たってガイドは必須ですが、そこでベドウィンガイドを現地調達することで、団体ツアーでは味わえない自由度の高い登山が楽しめるはずだと結論づけました。

現地修道院からの回答は明快でした:「現地にはベドウィンガイドが常時待機している。ガイド無しで来ても現地で調達可能」。この一言で、私の中の迷いが晴れました。

これらの情報により、レンタカーでの単独アクセス+現地ガイド調達という作戦で行くことを決めました。不安と期待が入り交じった心境でしたが、冒険への第一歩を踏み出す時が来たのです。

実際の様子:レンタカーでの移動

シャルム・エル・シェイク空港でのレンタカー受け取りの際に、レンタカー会社スタッフに対し改めて本当にシナイ山まで行けるのかを口頭で確認しました。スタッフは慣れた様子で答えてくれました。

「問題ない。ただし、検問通過のためには途中でこのカードを見せる必要があるから絶対になくさないでね」

そう言って、まるで護符のような重要さで車両登録証を預けてくれました。この小さなカードが、砂漠の奥地への扉を開く鍵となるのです。

まるで水戸黄門の紋所のような車両登録書

実際に、シャルムから聖カタリナへ向かう一本道で、6回ほど検問に遭遇しました。遠くに見える検問所のバリケードが視界に入る度に、心臓の鼓動が早くなります。その度に車両登録証を検問官に見せ、行き先を聞かれるので「ガバル・ムーサ(シナイ山)だよ」と告げました。

最初は果たして本当に通れるのかとびびっていましたが、どの検問でも検問官はにっこりと笑顔を見せて通してくれました。中には「良い旅を!」と英語で声をかけてくれる親切な警察官もいました。慣れてくればこっちのものです。砂漠の番人たちは、思っていたよりもずっと温かい人々でした。

エジプト当局は全国的に重要施設や観光地、道路の検問所などに武装した警備担当者を配置しており、これらの検問は観光客の安全確保のためのものです。適切な書類さえあれば、外国人でも問題なく通過できることが実証されました(このあたりの、道路交通状況については過去の記事で詳しく執筆しています)。

www.kosupatravel.com

道中では、ドライブ休憩&行動食調達を兼ねて、ダハブのチェックポイントにあるサービスエリア「Take 5」で一時休憩。このエリアでは、商店もガソリンスタンドも全然ありません。ドライブ旅の際には予め休憩ポイントをいくつか調べてブックマークしておくことをお勧めします。

ついでに紅海の魚ハンドブックを調達。シナイ山に登った後は、間髪入れずダハブへシュノーケリングしに行く予定です。

検問での時間により、予定より少し遅れて聖カタリナに到着しましたが、大きな問題はありませんでした。時間は既に午前2時半。レンタカーで来た場合は、聖カタリナ修道院から1キロほど離れた場所に車を停めなければなりません。少し時間ロスがあるので、御来光ギリギリに到着するのは避けた方がいいかもしれません。

最後の難関:現地でのガイド調達

さて、最後の難関は現地でのガイド調達です。果たして本当にガイドはいるのでしょうか?これから深夜の登山が始まるというのに。

いよいよシナイ山へ。あちらからはオプションのラクダガイドが向かってくる。

聖域に入ろうとした際に、日焼けした強面の係員に「ガイドはいるか?」と聞かれました。いないと答えると、無言で別室へ案内されました。尋問でも受けるのか?と一瞬心が躍りましたが、実際には丁寧な料金説明をしてくれ、すぐに公式のベドウィンガイドを当てがってくれました。

ビジターセンターのようなエリア

ガイドは1名800エジプトポンド。こちら側の人数に関わらず、一律料金でした。

特にぼったくられることもなく、非常に良心的な価格設定でした。これにて無事登山の準備が整いました!外はすっかり暗くなり、砂漠の夜の静寂が辺りを包んでいます。気づけば時刻は午前3時近く。満天の星空の下、いよいよシナイ山への挑戦が始まります。

果たして御来光に間に合うのでしょうか?ベドウィンガイドとの出会い、そして神秘的な夜間登山の体験については、続編記事で詳しくお伝えします。

全ての準備が整ったので、これより登山開始

まとめ

今回の検証により、シナイ山への単独アクセス(レンタカー+現地ガイド)は十分可能であることが実証されました。重要なポイントは以下の通りです:

  1. 車両登録証は命綱: 検問通過に絶対必須の書類です
  2. 時間に余裕を持つ: 検問や駐車場からのアクセスで予想以上に時間がかかります
  3. 現地ガイドは確実に調達可能: 24時間体制で待機している頼もしい存在です
  4. 料金は明朗会計: ぼったくりの心配は杞憂でした

ネット上の「不可能説」は、憶測に過ぎませんでした。適切な準備と現地のルールを守れば、団体ツアーでは味わえない自由度の高いシナイ山体験への道は確実に開かれています。

次回は、ベドウィンガイドとの出会いから始まる神秘的な夜間登山、そして感動的な御来光体験について詳しくレポートします。モーセが神と対話したとされる聖なる山頂で、私たちはどんな体験をすることになるのでしょうか?

続編をお楽しみに!

www.kosupatravel.com

本記事は、登山YouTubeチャンネル「Sweet Climber」さんとの共同取材で作成しています。現地の様子をより詳しく知りたい方は、下記動画を合わせてご覧ください。

youtu.be

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