前編では、プロヴァンスでのレンタカーの事前知識について詳しくお伝えしました。
今回は実際にマルセイユ空港からスタートして、ゴルド(Gordes)、ルシヨン(Roussillon)、ルールマラン(Lourmarin)を巡る約300キロのドライブ体験を詳しくレポートします。
計画していたルートは、マルセイユ空港→ゴルド→ルシヨン→ルールマラン→マルセイユ市内返却というプロヴァンス・リュベロンの人気村を網羅するコースでした。事前にEV車を予約していましたが、空港での思いがけない提案が旅の流れを大きく変えることになります。
空港での受け取り:予想以上の待ち時間

マルセイユ・プロヴァンス空港に到着し、予定通りの時刻にレンタカーのピックアップに向かいました。今回はCarjet.comを通じてHertzで手配していたのですが、カウンターには予想をはるかに超える長い列ができていました。
ハイシーズンの影響もあり、結局30分程度は待つことに。前編で「事前予約が必須」とお伝えしましたが、予約をしていてもこの待ち時間は覚悟しておく必要があります。空港到着後のスケジュールには、余裕を持たせておくことを強くお勧めします。
順番が来てカウンターに向かうと、スタッフの方が予約内容や保険について丁寧に確認してくれました。ここで予想外の展開が待っていました。
事前に予約していたEV車について、「この車種は小型で、バッテリーがすぐに無くなってしまう」との説明を受けたのです。300キロほど走る予定と伝えると、「何度も充電が必要になる可能性がある」とのこと。当方、初の電気自動車レンタルだったので、そのあたりの勝手をよく理解していませんでした。

そこでスタッフが提案してくれたのが、ルノーのMeganeへの変更。「充電なしで300キロを走破できる車の方が良いのではないか」という親切なアドバイスでした。EV車の充電にはかなりの時間がかかるとのことだったので、ありがたく受け入れることにしました。
車両確認と困惑
手続きを終えて駐車場で実際の車両と対面。最新型のルノー Meganeは確かにハイテクで格好いい車でしたが、これが問題の始まりでした。

いざ出発をと思ったものの、そのハイテクさ故、操作の仕方がいまいち分からず立ち往生してしまいました。エンジンのかけ方、ギアの入れ方、さらにはサイドブレーキの解除方法まで、すべてが普段目にする車とは異なっていました。
色々と調べながら試行錯誤すること約15分、ようやく理解できてやっと発進することができました。前編で「駐車場での操作確認は必須」とお伝えしましたが、想像以上に時間がかかることを身をもって体験しました。
マルセイユ空港から高速道路へ

ようやく出発し、マルセイユ空港から高速道路に乗ってゴルド方面へ北上を開始しました。前編で説明した130km/hの世界がいよいよ始まります。実際に体験すると、この速度差は想像以上でした。
しかし、予想に反して高速道路自体にはあまりストレスを感じませんでした。車線が広々としており、交通の流れも比較的スムーズです。速度は確かに速いのですが、道路環境が整っているため、思ったより運転しやすかったのが印象的でした。

ただし、注意が必要だったのが料金所です。ETC専用のレーンと現金・カード決済対応のレーンがあるのですが、旅行者は当然後者を利用する必要があります。
明らかにETC専用でないレーンには列ができていたので、そこがツーリスト用だと分かりましたが、事前に知らないと間違えそうになります。これは旅行者には重要な情報です。
ゴルドでの駐車地獄:予想を超える困難
高速道路を降りると、車通りの少ない山道を走ることになりました。前編で警告していた「極細道路」がちらほら現れます。

ゴルドに到着すると、前編で触れた駐車問題の現実に直面。どこを見ても駐車場はいっぱいで、ようやく空いているスペースを見つけても、今度はかなり狭いスペースに縦列駐車しなければなりません。

旅行者にはあまりにリスキーな状況でした。レンタカーや他所の車を傷つけるリスクを考えると、とても挑戦できません。仕方なく諦めて、町から徒歩10分以上離れた場所にようやく駐車スペースを見つけました。

後で他の村と比較しても、ゴルドの駐車問題が一番深刻でした。人気観光地ならではの悩ましい問題です。


ゴルド→ルシヨン:山道ならではの悪天候

ゴルドからルシヨンへの道のりは、「極細道路」の真骨頂でした。完全な山道をひたすらうねうねと走り続けます。車がすれ違えないような崖道も多々あり、対向車が来るたびにヒヤヒヤの連続でした。

ルシヨンに到着し、しばらく街ブラを楽しんでいると、雲行きが怪しくなってきました。そしてしばらくすると、土砂降りの雨と強風が襲来!まるで嵐のような天候でした。
夏のプロヴァンスといえば晴天のイメージがありましたが、山間部では天気が変わりやすいようです。これは予想外でした。

一目散に退散することにしたものの、とんでもない雨に見舞われながら視界の悪い山道を運転するのは、今回の旅で最も危険を感じた瞬間でした。このまま停車するわけにもいかず、とりあえずルールマラン方面へと山道を慎重に進んでいきました。
山越えの発見:プロヴァンス車旅の醍醐味
ルールマラン方面へ山越えを続けていると、天気が段々と良くなってきました。山の天気の変わりやすさを身をもって体験しました。

そんな中、途中Lacosteなどの小さな村をいくつか通過しました。山道の中に急に中世の町並みが現れる瞬間は、本当にほっこりします。これこそがプロヴァンス車旅の醍醐味なのかもしれません。公共交通機関では絶対に味わえない発見の連続でした。
ルーマランに到着する頃には、すっかり晴れていました。心置きなく街ブラ観光を楽しめます。この街はゴルドのような騒がしい観光地感がなく、人々が落ち着いて過ごしている様子が印象的でした。

駐車場にも比較的余裕があり、観光地化がそれほど進んでいない分、本来のプロヴァンスの魅力を感じることができました。
マルセイユ市内返却:最後にして最大の難関

日も傾いてきたので、そろそろマルセイユへと帰還することに。今回は借りた場所と違うステーションで返却する、いわゆる「ワンウェイ返却」のため、返却の流れがちょっと特殊でした。

マルセイユ市街地は、これまでの山道とは全く違った困難さがありました。かなりごちゃごちゃした大都会で、マナーの悪い車がひしめき合っている上、一方通行や左折禁止なども多く、GPSに頼っても混乱の連続でした。
そんな中、なかなか返却ステーションが見つかりません。地図上の場所へ向かっても、そこにあるのはタバコ屋だけ。本当にここ?と困惑していると、親切な街の人が「レンタカーはあっちだよ」と駅の方面を指して教えてくれました。
ぐるっと街を大回りをしてその方向へ向かうと、確かにHertzのマークが見えました。なんとか返却場所にたどり着けたときは、心底ホッとしました。

しかし、まだ終わりではありませんでした。返却時には電池を80%まで充電して戻すことになっていたのですが、このステーションにある充電スタンドの充電スピードがかなり遅いことが判明しました。

異様に遅い!フル充電まで7時間かかるとの表示が出ました。いやいや、もう夜の10時ですよ。ホテルに戻って夕食を取り、一刻も早く休みたいのに!
仕方なく翌朝早朝に様子を見に来ることにしました。予想以上にトラブル続きの展開でした。

翌朝6時過ぎに来ると、無事にフル充電されていました。車を所定の返却スペースに停め、ロックをかけて鍵を返却ポストに入れて完了。

振り返ってみると、予想以上にトラブル続きのレンタカー旅でしたが、それも含めて貴重な体験となりました。
学んだ教訓とアドバイス
今回の体験を通じて、前編でお伝えした準備の重要性を改めて実感しました。特に、レンタカー会社のスタッフからのアドバイス(コンパクトEV車から中型車への変更提案)は非常に有用でした。
右側通行とラウンドアバウトの組み合わせは、確かに日本人には困難ですが、50キロ程度走ると徐々に慣れてきます。最初の数時間は特に慎重に運転することが重要です。
駐車場探し、細い道での譲り合い、慣れない運転システム──すべてが予想以上に時間を要します。スケジュールには十分な余裕を持たせることが、安全で楽しいドライブの秘訣です。
まとめ:困難だが価値ある体験
プロヴァンスでの300キロドライブは、確かに困難でした。しかし、公共交通機関では絶対に味わえない景色、隠れた村々での発見、自分のペースで旅を進められる自由──これらすべてが、苦労に見合うだけの価値を提供してくれました。
前編でお伝えした注意事項を頭に入れ、十分な準備と心構えがあれば、プロヴァンスでのレンタカー体験は忘れられない思い出となるはず。最初は恐る恐るの運転でも、徐々に慣れてくる過程も含めて、それ自体が旅の貴重な体験の一部となることでしょう。い