
マントンの魅力は、その街並みを実際に歩いて感じることにあります。オレンジやピンク、黄色に彩られたカラフルな建物が立ち並ぶ旧市街、地中海に面した開放的なプロムナード、石畳の路地に隠れた小さな広場。地図を見ながら計画的に回るよりも、気の向くままに歩いてみる方が、マントンの本当の魅力に出会えるかもしれません。
今回、実際にマントンの旧市街とプロムナード周辺を歩いてみました。全体で3時間弱ほどのゆったりとした散策です。前回の記事で紹介したHôtel Le Balmoralを起点に、マントンの街を巡ります。
この記事では3回に分けて、マントン散策の様子をお届けします。第1回目の今回は、プロムナードから旧市街へ、市場と路地を巡る様子をご紹介します。
ホテルを出発、プロムナードを東へ

朝食を終えて、ホテルを出発したのは午前10時頃。Le Balmoralの目の前には既にビーチが広がっていますが、今日はまず東へ向かって歩いてみることにしました。
海沿いのプロムナードを歩いていくと、潮風が心地よく吹いてきます。右手には地中海の青、左手にはマントンの街並み。朝の散歩やジョギングを楽しむ地元の人たちとすれ違います。

偶然見つけた小さな市場エリア
プロムナードから少し入った場所に、ちょっとした市場のようなエリアがありました。何か面白そうな雰囲気だったので、裏路地へそれてみます。

ここでは絵画や陶器、手編みのバスケット、アクセサリーなどの小物を売っています。お店というより、路上に作品を並べた簡易的なスタイル。アーティスト本人がお店に立って販売している様子も見られます。

その中のお店、一人の女性が描いた水彩画は、マントンの街並みを題材にしたもの。柔らかいタッチで描かれた旧市街の風景が、何枚も並んでいます。陶器を扱うお店では、レモンをモチーフにした皿やカップが目を引きました。マントン名産のレモンは、こうした工芸品のデザインにもよく使われています。
観光地化された市場とは違う、手作り感のある雰囲気。地元のアーティストたちが、自分の作品を直接販売している空間でした。
路地に入る:夏の青果と地元の空気
せっかくなので、そのまま路地を進みながら旧市街を目指すことにしました。

路地に入ると、さらに地元の空気が濃くなります。夏らしい光景が目の前に広がりました。青果を扱っている露天が並び、トマト、ズッキーニ、桃、メロンなど、旬の野菜や果物が山積みになっています。
地元の人たちが買い物をしている様子を見ていると、マントンの日常が垣間見えます。観光客向けではなく、本当に地元の人たちが利用している市場なのでしょう。
そして、その先に屋内型のマルシェの入口が見えてきました。
Le Marché des Halles de Menton:活気あふれる屋内市場

Le Marché des Halles de Menton(マルシェ・デ・アル・ド・マントン)は、マントンの中心的な屋内市場です。入口を入ると、いろんなお店が並んでいます。
レモンを使ったドレッシングやジャム、オリーブオイル、地元産のハム、旬のフルーツ、チーズ、パン。そして、ちょっとしたタパス的な惣菜(フランス語では"charcuterie"や"traiteur"と呼ばれます)を売っているお店もあります。小さなタルトやキッシュ、マリネされた野菜など、すぐに食べられるものが並んでいました。

市場の中は活気に溢れています。観光客の姿もありますが、地元民も多く、買い物かごを持って品定めをしている様子が見られます。店主とお客さんが顔見知りのようで、世間話をしながら買い物をしている光景も。
私たちも市場の中を歩き回り、気になるお店を覗いていきます。
スパイス屋でミックススパイスを購入

特に気になったのが、スパイスを扱っているお店です。店頭には色とりどりのスパイスが瓶に詰められて並んでいます。カレー粉、パプリカ、クミン、ハーブ・ド・プロヴァンス、そしてオリジナルのミックススパイス。
地中海料理に合うミックススパイスを勧められたので、それを購入することにしました。小さな瓶に詰めてもらいます。
旅先で買った調味料は、帰国後に使うたびに旅の記憶が蘇るので、良いお土産になります。
マルシェを抜けて:いよいよ旧市街の路地へ
マルシェを抜けると、いよいよ旧市街の路地の中に入っていきます。

遠くから見るとオレンジ色一色に見えた建物群ですが、実際に中に入ってみると、色のバリエーションが豊かなことに気づきます。ピンクがかった建物、黄色い建物、薄いオレンジ、濃いオレンジ。微妙に異なる色調の建物が並んでいます。
統一感がありながらも、一つひとつの建物が個性を持っている。それがマントン旧市街の魅力です。
お店が並ぶ通りと閑静な裏路地

メインの通りには、お店やレストランが並んでいます。カフェのテラス席では、観光客や地元の人たちがコーヒーを飲んでいます。レモン関連の商品を扱う土産物店、アンティークショップ、小さなギャラリーなど、歩いているだけで楽しい通りです。
しかし、そこから一歩脇道に入ると、雰囲気が一変します。閑静な裏路地。観光客の姿はほとんどなく、静かな住宅街の雰囲気です。

石畳の細い路地、古い木のドア、窓辺に置かれた鉢植えの花。生活感のある風景が広がっています。洗濯物が干されているのも見えます。ここは観光地であると同時に、人々が暮らす街なのだと実感します。
路地に点在する飲料水:暑い夏の救世主
路地を歩いていると、ちょこちょこと水道を見かけます。壁に設置された小さな蛇口です。
最初は何だろうと思ったのですが、どうやら飲むことができる水のようです。"Eau potable"(飲用可)と書かれているものもあります。

暑い夏の日、実際にここで喉を潤している人もちらほら見かけました。地元の人がペットボトルに水を汲んでいる姿も。観光客にとっても、散策中に無料で水分補給できるのはありがたいシステムです。
マントンの旧市街は坂道が多く、夏は特に暑いため、こうした公共の飲料水が設置されているのでしょう。実用的でありながら、旅行者にも優しい街の配慮を感じます。
まとめ:地元の空気を感じながら旧市街へ
Le Balmoralを出発して、プロムナードを歩き、偶然見つけた市場エリア、屋内マルシェle marché des Halles de Menton、そして旧市街の路地へ。
計画通りに観光スポットを巡るのではなく、気になったものに引き寄せられるように歩いていく。そんな散策スタイルが、マントンには合っているように感じます。
市場で地元の人たちの買い物風景を見たり、アーティストと言葉を交わしたり、路地で水を飲んだり。観光地としてのマントンだけでなく、人々が暮らす街としてのマントンも見えてきました。
次回の記事では、旧市街の中心部へさらに進み、マントンを代表する教会や、路地の奥に隠れた魅力をご紹介します。石畳の坂道を登りながら、マントンの歴史と文化に触れていきます。