沖縄を訪れると、必ず耳にする名物料理の一つに「イラブチャー」があります。この独特な名前の魚は、実は沖縄の海の豊かさを象徴する存在であり、その魅力は見た目だけでなく、味わいにも及びます。今回は、このイラブチャーについて、宮古島での遭遇・実食体験を交えながら、別称から海の中での出会い方、食べ方まで詳しく解説していきます。
イラブチャーとは?
イラブチャーは、沖縄における「ブダイ類」の総称です。沖縄の方言で「イラブ」は「選ぶ」という意味があり、「チャー」は魚を指します。つまり、「選りすぐりの魚」という意味が込められているのです。
興味深いことに、現地の方によると「青い色味のブダイ」がイラブチャーと呼ばれるそうです。標準和名で言えば、ナンヨウブダイを始め、イロブダイ、アミメブダイなどを指すことが多いようです。
ただし、これらの魚種でも幼魚など青い色合いではない状態のものはイラブチャーとは呼ばれません。かつては成魚と幼魚がそれぞれ別の魚と思われていたため、イラブチャーではない別の呼び名がついているのだといいます。この色による呼び分けは、沖縄の魚文化の奥深さを感じさせますね。
鮮やかな色彩と愛らしい姿
イラブチャーの中でも、特に目を引くのがナンヨウブダイです。その鮮やかな青い色彩は、まるで熱帯の海そのものを体現しているかのよう。青い沖縄の海の中でも、ひときわ鮮やかで目立つナンヨウブダイ。実は、このナンヨウブダイは沖縄だけでなく、モルディブなどの熱帯地域でもよく見かけることができます(ちなみにモルディブに比べると沖縄のナンヨウブダイは少しミニサイズ)。
英語では「パロットフィッシュ(Parrotfish)」と呼ばれるこの魚は、その名の通り、オウムのくちばしを思わせる特徴的な口元を持っています。大きな目と相まって、非常に愛らしい印象を与えます。ダイバーやシュノーケラーにとっては、海中で出会えば思わず笑みがこぼれるような、人気の高い魚の一つです。
イラブチャーと毒魚の誤解
ここで重要な注意点があります。イラブチャーは時々、本土では毒魚と誤解されることがあります。これは、同じブダイ科に属するアオブダイという毒魚が存在するためです。
アオブダイは確かに有名な毒魚であり、食用には絶対に適していません。しかし、イラブチャーとして知られる魚種(ナンヨウブダイ、イロブダイ、アミメブダイなど)は、アオブダイとは異なり、安全に食べることができます。
この誤解は、ブダイ科の魚の多様性と、地域による呼び名の違いから生じています。沖縄では、食用として安全なブダイ類を「イラブチャー」と呼んでおり、アオブダイとは明確に区別しています。
海での出会い方
沖縄の海は、イラブチャーの宝庫です。特に宮古島、石垣島などの沿岸部の浅いエリアには、多数のブダイが生息しています。シュノーケリングやスキンダイビングでも、運が良ければ彼らの姿を見ることができるでしょう。カラフルな体色と特徴的な泳ぎ方は、初心者でも容易に識別できます。サンゴ礁の周辺を悠々と泳ぐ姿は、まさに沖縄の海の象徴とも言えます。
ただし、ここで注意しなければならないのは、勝手に採取することは厳禁だということです。これは密漁行為に当たり、法律で罰せられる可能性があります。海の生態系を守るためにも、観察は目で楽しむだけにとどめましょう。
ちなみに筆者の肌感覚的にほぼ100発100中でイラブチャーに出会えるのが、宮古島市、下地島の中の島海岸(カヤッファ)。シュノーケリングやスキンダイビングにもうってつけの、魚影の多い珊瑚礁が特徴です。周囲にはトイレやシャワーはないので、着替えなどは工夫する必要があるものの、個人的にもおすすめのビーチです。
※中の島ビーチは、宮古島市域でも群を抜いて透明度が高く魚も豊富なシュノーケリング&スキンダイビング向けビーチですが、つい最近スキンダイビング中の水難事故が発生した海岸なので、無理な遊泳はしないように気をつけてください。
イラブチャーの味わい
では、実際にイラブチャーはどのような味わいなのでしょうか。実際に宮古島の居酒屋で刺身として頂いてみました。
つい先ほど中の島ビーチで悠々と泳いでいた真っ青なイラブチャー。なんとその鮮やかな見た目に反して、肉は非常に薄い白ピンク色。
一口食べてみると、口のなかに広がるのはさっぱりとした淡白な味わいです。白身魚特有の繊細な風味がありますが、同時に海の香りも感じられます。脂が少ないため、口当たりは軽く、後味もすっきりとしています。この特徴から、ダイエット中の方や、あっさりした味わいを好む方にとっては理想的な魚料理と言えるでしょう。カロリーを気にせず、たんぱく質を摂取できる点も魅力的です。
調理法としては、刺身やお造りはもちろん、カルパッチョやマリネなど、生食で楽しむのがおすすめだとのこと。また、沖縄ならではの調理法として、塩焼きや煮付け、唐揚げなども人気があります。特に、島野菜と一緒に味噌で煮込んだ「イラブチャーのンブシー」は、郷土料理として親しまれています。
まとめ
イラブチャーは、沖縄の海の豊かさを象徴する魚であり、その美しい姿と独特の味わいで、多くの人々を魅了し続けています。本土での毒魚との誤解はありますが、適切に選別された安全なイラブチャーは、沖縄の食文化において重要な位置を占めています。
沖縄を訪れた際には、ぜひ一度イラブチャーを味わってみてください。そして、可能であれば海中でその姿を観察してみるのもおすすめです。イラブチャーを通じて、沖縄の自然と文化、そして海の恵みの素晴らしさを味わって見てください。
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