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楊貴妃も愛したシルクロードの秘湯「華清宮」を訪ねてみよう【唐文化体験・西安旅行】

巨大な楊貴妃(?)が出迎えてくれる華清宮

西安といえば兵馬俑。多くの日本人旅行者が中国を訪れる際に必ず訪問リストに入れる世界遺産の一つです。しかし、その兵馬俑のすぐ近くに、歴史と温泉が織りなす魅力的なスポット「華清宮(ホアチンゴン)」があることをご存知でしょうか?

日本ではあまり知られていないこの場所は、かつて唐の玄宗皇帝と楊貴妃が愛を育んだロマンティックな宮殿であり、シルクロードの歴史が息づく秘湯でもあります。今回は、西安観光の穴場ともいえる華清宮の魅力と、効率的な観光プランについてご紹介します。

華清宮とは?歴史と概要

華清宮は西安市の東、驪山(りざん)の麓に位置する古代の離宮(皇帝の別荘)です。温泉が湧き出る地として古くから知られ、秦の始皇帝の時代から歴代の皇帝たちが離宮を建てた場所でした。しかし最も有名なのは、唐の玄宗皇帝が楊貴妃のために大規模な改修を行い、毎年冬を過ごした時代です。

玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋は、日本でも「長恨歌」として伝わる有名な物語。ここ華清宮は、二人の愛の舞台となった場所なのです。宮殿の名前の「華清」とは「美しく清らかな」という意味で、まさに皇帝が愛した楊貴妃の美しさを表しているともいわれています。

また、近代史においても重要な場所で、1936年に蒋介石が張学良らに監禁された「西安事件」の舞台ともなりました。

アクセス方法:兵馬俑とセットで効率よく観光

華清宮へのアクセスは非常に便利です。西安市内から地下鉄8号線に乗り、「華清池」駅で下車すれば、徒歩5分ほどで到着します。地下鉄は一方向料金で約9元(約180円)と格安です。

ここがポイント!華清宮を観光した後は、門前からタクシーで約15分(30元程度)で兵馬俑博物館に移動できます。逆に兵馬俑から華清宮へ向かうよりも、この順番での観光がスムーズです。多くの観光客は朝一番で兵馬俑に向かうため、まず華清宮を訪れることで混雑を避けられるというメリットもあります。

一日でこの2つの世界遺産を効率よく巡るなら、地下鉄→華清宮→タクシー→兵馬俑→バスorタクシーで市内に戻るというルートがベスト。時間と交通費の両方を節約できる、お得な周り方です。

また、時間に余裕がある方は華清宮で行われる文化公演も見逃せません。特に「長恨歌」の野外劇は、音と光の効果、壮大な舞台セットで唐の時代の物語を現代に蘇らせる素晴らしい公演です。兵馬俑と華清宮を1日で巡るツアーも多く催行されていますので、言葉に不安のある方はツアーを利用するのも一つの方法です。

華清宮の見どころ

華清宮は大唐文化を主題とした著名な観光エリアで、いくつかの特徴的なスポットがあります。ここでは主な見どころをご紹介します。

1. 歴史的な温泉池

華清宮は温泉で有名で、いくつかの歴史的な浴場跡が見学できます。唐の玄宗皇帝が入浴したとされる「蓮花池」、唐太宗李世民が入浴した「星辰池」、そして皇子たちが入浴したとされる「太子湯」などがあります。

楊貴妃専用として使用されてた海棠湯は、こじんまりとした規模ながらも一番の見どころ

これらの温泉池はそれぞれ特徴的な形をしており、特に「海棠湯」は楊貴妃が使ったとされる浴槽で、海棠の花の形に造られています。訪れる際には、これらの浴槽が実際にはどのように使われていたのか、当時の入浴文化に思いを馳せてみるのも面白いでしょう。

2. 唐御湯遺址博物館

中国唯一の皇室の温泉浴場を主題とした遺跡博物館である「唐御湯遺址博物館」も見逃せません。ここでは盛唐時代の宮廷入浴文化が展示されており、当時の浴槽、給排水システム、暖房施設などの遺構を見ることができます。

博物館内では出土品や復元模型を通して、1300年以上前の高度な入浴文化と技術を学ぶことができます。温泉が単なる入浴施設ではなく、皇帝の権威や唐王朝の繁栄を象徴する重要な文化的要素だったことがわかります。

3. 九龍湖

九つの龍頭があることから名づけられた「九龍湖」も、華清宮の風水的に重要な場所です。湖畔には「珍宝館」があり、古代からの文化財を観賞することができます。九つの龍の口から湧き出る水は、皇帝の権威と繁栄を象徴していると言われています。

周囲には古代中国の庭園様式を取り入れた遊歩道があり、驪山の麓の美しい景観を楽しみながら散策することができます。

4. 西安事変遺跡

華清宮は1936年に起きた「西安事変」の舞台でもあります。「兵諫亭」や「烽火台」など、この歴史的な事件に関連する遺跡を見学することができます。

蒋介石が監禁された「五間厅」や、彼が窓から逃げ出そうとして落下した場所も保存されており、中国近代史の重要な転換点を学ぶことができます。当時の様子を再現した展示も充実しており、この事件を通じて抗日統一戦線が形成された歴史的背景を知ることができます。

楊貴妃も愛した温泉を体験しよう

華清宮の最大の魅力は、やはり温泉!敷地内には「華清池温泉度假酒店(華清池温泉リゾートホテル)」があり、実際に楊貴妃と同じ源泉の温泉に入ることができます。この温泉は「駐顔湯(肌を若く保つ湯)」とも呼ばれ、1300年以上もの間絶えることなく湧き続けている貴重な泉質です。

立派な泉質を誇る

温泉の源泉は驪山から湧き出る鉱物成分を含む温泉で、様々な効能があるとされています。特に美肌効果に優れており、楊貴妃がこの温泉で美しさを保っていたという伝説があります。「時を超えて楊貴妃と混浴」とも言えるこの体験は、特に女性旅行者に人気です。

温泉を浴びる楊貴妃

温泉施設は「帝王浴」と呼ばれる大浴場のほか、プライベート感覚で楽しめる個室風呂もあります。個室風呂は唐代の宮廷様式で装飾されており、当時の雰囲気を感じることができます。

ホテルは高級路線の者が多いが、ラグジュアリーなひと時を過ごすにはもってこい

ホテルの宿泊プランには温泉入浴が含まれていることが多く、宿泊すれば朝夕の静かな時間に温泉を楽しむことができます。もちろん日帰り入浴も可能で、料金は季節により変動しますが、温泉入浴チケットは約200元(約4,000円)からとなっています。

その他華清宮では、温泉だけでなく様々な文化体験イベントも開催されています。最近では非遗(無形文化遺産)体験シリーズの無料講座も開かれており、金石拓印(碑文の拓本取り)、木版年画(木版画)、草木拓染(草木を使った染色)などの伝統文化体験ができます。これらの体験を通じて、中国の優れた伝統文化の奥深さと温かみを感じることができるでしょう。

無料にもっと気軽に温泉を楽しみたい場合は、温泉に手足だけをつけて温まったりすることも可能

また、春節期間中には「龍行龘龘、有龍則霊」(龍が進めば霊験あり)といったテーマのイベントが開催され、年男・年女の観光客には無料開放や、唐宮対詩(宮廷での詩の対句)、幸運投壺(壺に矢を投げ入れる遊び)など、龍に関連した様々な体験イベントが用意されることもあります。

温泉施設内のレストランでは、唐代の皇帝や楊貴妃が好んだとされる宮廷料理も味わうことができます。温泉と美食で、古代の皇帝と貴妃の優雅な時間を追体験してみてはいかがでしょうか。

訪問のベストシーズン

個人的には立春辺りがオススメ。温泉が気持ちいい気候かつ、もやがかかった景色がなんとも臨場感たっぷり。

華清宮は一年中観光可能ですが、特におすすめは春(3月〜5月)と秋(9月〜11月)です。夏は西安特有の猛暑によって温泉どころではないので、避けたほうが快適に観光できます。

冬の訪問も悪くありません。寒い時期こそ温泉の良さを実感できますし、唐の時代も玄宗皇帝と楊貴妃はここで冬を過ごしていました。雪景色の華清宮は写真スポットとしても抜群です。

まとめ

兵馬俑の陰に隠れがちな華清宮ですが、歴史と温泉、そして悲恋物語が交差する魅力的な観光地です。地下鉄とタクシーを上手く組み合わせれば、兵馬俑とセットで効率よく観光できます。

国史上最も美しいとされた楊貴妃が愛した温泉に浸かりながら、1300年前のロマンスに思いを馳せる。シルクロードの歴史を肌で感じられるこの体験は、西安旅行の隠れた見どころといえるでしょう。

遠い異国で、楊貴妃も使った温泉に身を委ねる贅沢。次の西安旅行では、ぜひ華清宮を訪れてみてください。きっと忘れられない思い出になるはずです。