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悪名高きエチオピアグルメ、インジェラって本当にまずいの?現地食べ比べを経て正直な感想レポート【エチオピア料理】

インジェラはまずい」――エチオピア料理について語られる際、必ずと言っていいほど耳にするフレーズです。SNSやブログでも、その独特の味わいについて辛口コメントが相次ぎ、旅行者の間では「覚悟して食べるべき料理」として知られています。しかし、この東アフリカの大国で国民食として愛され続けている料理が、本当にそこまで不味いものなのでしょうか。実際に現地で食べ歩いた経験から、その謎に迫ってみたいと思います。

インジェラとは

 
 
 
 
 
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インジェラは、テフという穀物を原料とした発酵パンです。テフはエチオピアの高原地帯で古くから栽培されている雑穀で、栄養価が高く、グルテンフリーという特徴を持っています。鉄分が豊富で、タンパク質も含まれているため、現地では重要な栄養源となっています。

製法は、テフの粉を水で練り、数日間発酵させた後、大きな円形の鉄板で薄く焼き上げます。この発酵過程が、インジェラ特有の風味を生み出す鍵となっています。見た目はクレープに似ていますが、表面には無数の小さな穴が開いており、スポンジのような独特の食感を持っています。この穴は「目」と呼ばれ、良質なインジェラであるかどうかを判断する重要な指標とされています。

ファーストコンタクト:アディスアベバにて

私がインジェラと初めて対面したのは、エチオピアの首都アディスアベバのBole地区でのことでした。国内線への乗り換え時間を利用して、地元で評判の高いレストランを訪れたのです。レビュー数の多さから期待に胸を膨らませていましたが、現実は予想をはるかに超えるものでした。

店内に入ると、すでに独特の発酵臭が漂っています。注文から程なくして運ばれてきたインジェラは、想像以上に大きな円形のパンでした。灰色がかった色合いは一見すると不安を煽りますが、表面に開いた無数の小さな穴が芸術的な模様を描いています。

口に運んだ瞬間、言葉にし難い独特の味わいが広がります。決して食べられないほどではないものの、何とも形容しがたい酸味が特徴的です。発酵による独特の香りと味わいは、お酢とも異なる独特のものです。表面の無数の気泡は、その長い発酵過程を物語っているかのようでした。

付け合わせのシロ(豆のペースト)や調味料のバレバレ(スパイスミックス)は絶品でした。シロのクリーミーな食感とスパイシーな風味、バレバレの複雑な香りは、まさに伝統的なエチオピア料理の真髄といえるものでした。しかし、これらの美味しさゆえに、途中からはインジェラそのものよりも、付け合わせを中心に食事を進めることになってしまいました。

逃れられないインジェラ

その後もご飯を注文するたびに必ずついて来るインジェラ

「もうインジェラはいいや」と思ったものの、エチオピアでの食事で避けて通ることは不可能でした。牛肉料理のシャクラティブスを注文した際も、頼んでもいないのにインジェラが付いてきました。どうやらインジェラは、日本での白米のような存在なのです。主食としての地位は想像以上に確固たるもので、現地の人々にとって、食事といえばインジェラなのだと実感させられました。

インジェラと豪華な付け合わせ

アワサ地方では、現地のおじさんお薦めのランチで、インジェラの上に7種類もの具材が彩り豊かに盛られた料理と出会いました。ドロワット(スパイシーな煮込み料理)やキットフォー(生肉料理)、さまざまな野菜の煮込みなど、魅力的な付け合わせの数々。それぞれが独自の味わいを持ち、単体では非常に美味しいものでした。しかし、それらをインジェラで包んで食べると、やはりインジェラの酸味が主張を始めるのです。現地の人々は器用にインジェラを手で千切り、具材と一緒に丸めて食べていきます。その手際の良さに感心しつつも、私は依然としてインジェラとの格闘を続けていました。

最後の晩餐とまさかの和解

パンを頼んでもインジェラがついて来る

旅の終盤には疲れも重なり、インジェラへの拒否反応は頂点に。パンを注文しても、おまけのようについてくるインジェラ。この地域では、インジェラをロール状に巻いて提供するスタイルが一般的でした。見た目は日本の押し寿司のようで、これならば食べやすいかもしれないと期待しましたが、やはり特徴的な酸味は健在。しかし、バレバレの粉をたっぷりとまぶすことで、次第に食べられるようになっていきました。

最後の晩餐もやっぱりインジェラ

そして迎えた最後の晩餐。エチオピア正教の断食期間と重なり、肉料理は提供できないとのことで、ベジタリアン料理とインジェラの組み合わせとなりました。レンズ豆や野菜のカレー風煮込み、新鮮なサラダなど、色とりどりの付け合わせが並びます。不思議なことに、もう味わえないと思うと、あの酸っぱい味が妙に恋しく感じられたのです。お気に入りのテッジ(蜂蜜酒)を飲みながら、最後のインジェラを味わいました。発酵食品同士の相性なのか、テッジとインジェラの組み合わせは意外にも心地よいものでした。

まとめ

結論として、インジェラの味を心から美味しいと感じることはありませんでした。しかし、不思議なことに、あの独特の味わいは確実に記憶に刻まれ、時折思い出すようになっています。発酵食品特有の複雑な味わいは、「マズイ」という単純な評価では片付けられない奥深さを持っているのかもしれません。

エチオピアの人々がインジェラを愛してやまない理由は、単なる味覚の問題を超えた、文化的な深さを持っているのでしょう。数千年の歴史を持つこの発酵食品は、エチオピアの食文化の根幹を成すものであり、人々の生活に深く根ざしています。また、具材を共有しながら同じインジェラで食事をする習慣は、コミュニティの絆を深める役割も果たしているようです。

私にとってインジェラは、異文化理解の難しさと面白さを教えてくれた、貴重な経験となりました。最初は戸惑った味わいも、食べ続けるうちに不思議と受け入れられるようになっていく過程は、新しい文化に触れる際の心の動きそのものだったかもしれません。いつか再びエチオピアを訪れる機会があれば、もう一度インジェラに挑戦してみたいと思います。その時には、初めて感じた戸惑いを超えて、新たな味わいの発見があるかもしれません。

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